2013年10月6日日曜日

本物の「ゼロ戦」を訪ねて(その3 コクピット)


「キラフテ 木の靴べら専門店」 店主の宮原です。








今回はいよいよ「コクピット」の紹介です。


本当にありがたいことに、この記念館は、
「零戦」だけは撮影が許可されています。

しかもコクピットの脇まで、見学用タラップが伸びていて、
コクピット(操縦席)を手に取るような鮮明さで撮影が出来ます。
(ただし、お客さんが後ろで待っているので、超速撮影です!)

機体の大きさに比べて、操縦席は
「思ったより狭い」・・・


いかがでしょうか?
コクピット内は、ほぼ当時のままじゃないですか!!

零戦は単座戦闘機なので、パイロットはここで複雑な操縦を
すべて「独り」で行っていたんです。


かつて「プラモデル小僧」だった私は、少ない実機資料の本を見ながら
細工を施したものでしたが、その当時にこの零戦を見ることが出来たら
どれだけ興奮していたかわかりません。






コクピット内をよく見ると、
各所に丸く開けられた「穴」があるのがわかります。
特に、風防ガラス越しの金属製のシートの背面には
たくさん開けられています。

これは「1グラム」でも軽くするための工夫で、強度が許す限り、
このように機体各所に穴を開け、徹底した軽量化を計ったのです。

ちなみにこの零戦の機体の重量は「約1,700kg」で、
「トヨタ クラウン ハイブリット」とほぼ同じ重さしかないのです。



コクピットの左側の側面を見てください。
「薄っぺらい」と感じませんか?

なんと全く「防弾装備」が施されていないのです!!!
コクピットの側面は「一ミリ以下のアルミ合金」のままなんです!!!


当時の列強国の戦闘機は、コクピットの周りには、10ミリ以上の
鋼鉄の防弾板が装備され、敵機銃弾からパイロットを守るのですが、
当時の海軍が三菱に提示した要求書には「防弾装備」への要求が
なかったそうです。

つまり 「パイロットが敵弾に当たってしまう」 ことに対しての対応が
されていないのです。 「敵の弾に当たる前に、敵を落とす」 という思想が
軍部にあったと言われています。




その後、零戦の捕獲に成功した米軍は、
優れた運動性能や航続距離を思い知らされたのですが
その反面「全く施されていない防弾装備」に相当驚いたようです。





オリジナルの計器板



計器板も製造当時のまま残されています。

・最高速度530km、
・航続距離3,300km以上、
・実用上昇限度11,000m

という性能を考えると
「たったこれだけ?」という印象を持ってしまいます。
実際、余計なものは一切省かれています。


まだ「レーダー」など装備されていなかった当時は、
敵機の発見するのは「パイロットの目」。

先に敵機を発見すればそれだけ早く優位な方向から
攻撃を仕掛けることが出来ます。

「真昼に星を見る訓練をする」などという映画の
ワンシーンがあったほど大事な要素。


当時の零戦パイロットは世界最高レベルで、
この技量が零戦の無敵伝説を作ったといえます。

海軍のパイロット養成機関「予科練」には全国から、
知能、体力ともに優れた者が選抜され、想像を絶する訓練を経て、
列強に大きく劣る「工業力」や「技術力」をカバーしました。

復元された計器板



これはドイツ製の光学照準器を参考に製造されたもので、
2枚のガラスの間に十字の照準線が映像で映し出されます。

(それまでの照準器は、望遠鏡のような筒に
顔を思いっきり近づけて片目で覗いていました。)





7.7ミリ機銃。
空気抵抗を抑えるため、エンジンカウリング越しに
弾が発射されるようになっています。




風防に使われている透明素材は「ガラス」でなく
「アクリル樹脂」で出来た素材だそうです。

破片をこすり合わせると、独特の臭いを発することから
「匂いガラス」と呼ばれました。ただ当時のアクリル樹脂の製造技術は
欧米に比べると劣って、透明度、平滑度は低かったようです。

風防の枠はオリジナルのようです。






かつて、零戦のプラモデルに色を塗る際に、
最も苦労したのがこの風防の「枠」。

プラモデルの風防は透明な部品なので、風防の枠に
色を塗っていかなくてはなりませんが、細い面相筆で塗ると、
どうしても「ぺろっ」とはみ出してしまうんです。

いつもそこで失敗していたんですが、、プラモデル雑誌にて覚えた技は
風防全体に「マスキングゾル」という半透明の薄い膜を形成する液体を塗って、
それが乾いたら、カッターで枠の部分だけ切り取って、その上から色を塗って、
「マスキングゾル」をはがすとOK。というものでした。

懐かしい・・・




20ミリ機関砲の銃口


機関部
2ガラスケース内に展示されています。


翼内に搭載の「20ミリ機関砲」は、当時の戦闘機の武装としては
世界最強クラスのものでした。

「機関銃」は弾丸が貫通することで敵機にダメージを与えますが、
「機関砲」は弾丸の内部に「炸薬」が入っており、着弾すると同時に爆発し、
大型の爆撃機でも撃墜することが可能でした。